Q&A
- キレーション治療について
- 有害金属について
- キレーション治療の副作用について
- キレーション治療の方法について
- 動脈硬化について
- 高血圧について
- 頸動脈の閉塞性変化の治療効果について
- 心臓機能の改善について
- 下肢の血流改善効果について
キレーション治療について
キレーション治療の歴史は?
動脈硬化の治療としてキレーション治療が行われたのは、ほぼ50年前の1950年代半ばです。その後の約15年は治療方法の確立のための時期でした。1980年に入ると医者の学会も設立され治療方法の基準が確立され、臨床データをまとめた論文も多く出版されました。2004年春からはキレーション治療の心臓疾患に与える効果について、米国国立衛生研究所が5年計画の臨床試験を始めています。
キレーション(chelation)とはどういう意味ですか?
キール(Chele)というギリシャ語が語源です。キールとはギリシャ語で「カニのはさみ」という意味です。キレーションとはキールすなわちカニのはさみでつかみ取ることを意味しています。キレーション治療で使用するアミノ酸には金属原子をカニのはさみのように強くつかみ取る性質があるため、この治療方法の名前になったといわれています。”Chelation”という言葉は和英辞典にも出ていない化学専門用語になります。キレーション治療を直訳すれば、さしずめ「はさみ取り治療」といったところでしょうか。
キレーション治療とはどういう意味ですか?
体内の金属を排泄する治療のことです。環境汚染などの影響で我々の体内には様々な有害金属が蓄積されています。若い頃には被爆量が少ないことと排泄能力が高いことから健康面に与える影響は限られているのですが、加齢と共に金属の蓄積量も徐々に増加して細胞の働きを低下させると考えられています。この結果として、ホルモン分泌異常がおきたり、活性酸素が増えることでガンの発生率が増加したり動脈硬化が進行し易くなり、またアルツハイマー型痴呆などの難治性脳疾患の原因になっているとも言われています。アルミニウム、鉛、ニッケル、カドミウム、水銀などが代表的な有害金属とされています。こうした有害金属を体外へ排泄することが健康管理の基本ともいえるわけです。
有害金属について
有害金属はどうして体内に蓄積するのですか?
産業革命以来、人類の文明は急速に進歩しましたが、この文明の進歩は、石炭や石油という化石燃料の使用によって支えられています。こうした化石燃料の中には、鉛、カドミウム、アルミニウム、ニッケルなどの金属が不純物として含まれており、燃料として燃焼した際に空気中に放出されます。大気汚染が指摘されてから半世紀以上がたちますが、汚染された大気中にはこうした金属が浮遊していますので、こうした環境に住んでいる住民は必然的に有害金属を体内に取り込んでしまいます。また大気中の金属は雨となって地上や海に戻り植物や魚介類の体内に蓄積を起こします。こうした食品を食べることでも人間は重金属を体内に取り込んでしまいます。マグロやサメなど食物連鎖の頂点にいる魚ほど水銀などの有害金属を蓄積している可能性が高いと言われています。
有害金属のもたらす弊害は?
水銀、鉛、カドミウム、などの重金属類は神経毒として知られています。このためこうした金属が体内に増えると視神経障害や末梢神経障害が起きる可能性があります。最近北欧から報告された研究では体内水銀蓄積がふえると心臓疾患のリスクが高まるということです。ニッケルが増えると皮膚炎などアレルギー症状になりやすいと言われ、アルミニウムの場合にはアルツハイマー病の原因になるとも言われています。金属による障害はまだまだ未知の分野であり今後様々な現象が報告されてくると考えます。
キレーション治療の副作用について
キレーション治療の副作用は?
ACAM(米国の学術団体)が定めた治療方法に従わずに大量のEDTAが急速に点滴投与された場合には腎臓がダメージを受ける可能性があります。規定通りの方法ではこうした副作用はおこりません。この意味で、認定資格を有する医師の治療を受ける必要があるわけです。軽い副作用としては、点滴後の疲労感、脱力感、頭痛などがありますが、こうした症状は、キレーション治療を始めて3~5回経過すると消失する傾向があります。またキレーション治療には血糖値を低下させる作用があるため空腹時に点滴をうけるとムカムカするような不快な症状を伴うことがあります。このため出来るだけ食事をされた状態で治療を受けることをお勧めします。
キレーション治療の方法について
点滴以外でキレーション治療を行うことは可能?
点滴で使用されているEDTAを経口的に使用する試みがされましたが、治療効果があがりませんでした。その理由として、消化管からEDTAが吸収されずらいことが指摘されています。消化管からの吸収率は点滴の場合に比べて約5%といわれ、同等の効果を得るためには、経口の場合には点滴の20倍量のEDTAを使用しなくてはなりません。今ひとつの理由としてEDTAの血液濃度の変化があります。治療効果を考える場合にはEDTAの血液中の濃度が一時的に高濃度に上昇した方が効果的といわれています。このためには点滴が一番適した方法といえます。座薬での効果も検証されていますがその使用方法に抵抗があることや、直腸粘膜への刺激作用などの問題が指摘されています。キレーション治療は点滴による方法が最も効果的といえます。
キレーション治療の成功率はどの位ですか?
キレーション治療の生まれ故郷である米国では数々の論文でキレーション治療の効果が報告されています。なかでも2500人の患者でキレーション治療を行った結果をまとめた論文では、キレーション治療によって何らかの治療効果を認めた患者は全体の85~90%に達したことが報告されています。これらの患者は、心臓疾患、狭心症、閉塞性動脈硬化症(下肢へ行く血管が詰まる病気)、頸動脈の閉塞などのいわゆる動脈硬化性疾患が中心です。末梢血管の血流が改善することは皮膚温度を測定するサーモグラフィという器械を用いて確認がされています。下肢の血流障害を起こす閉塞性動脈硬化症の治癒率は90%以上と極めて高く次いで心臓病の80%という数字があります。とはいえ日常生活習慣の改善がなければキレーション治療の効果も半減します。大量の飲酒や喫煙の習慣が是正されない方の場合には、キレーション治療といえども焼け石に水になりかねません。当院でも飲酒、喫煙の習慣が止められない方では治療効果があまり出ていません。やはり基本となる生活習慣、栄養摂取を行ってはじめてキレーション治療の効果も発揮されるものといえます。
キレーション治療はなぜ90分かけて行われるのですか?
1950年代にキレーション治療が始まった時には数名の方が腎機能不全などの原因で亡くなったという報告があります。これは点滴する早さ、薬液量、点滴頻度について安全な方法が知られていなかったため起きた悲しい事故といえます。しかしその後の20年で試行錯誤の上安全な投与方法が確立されました。それは1.5gのEDTAを投与するためには90分以上かけて点滴を行うというルールです。これが現在まで30年以上続いている方法であり、当院で行っている点滴の方法でもあります。当院の点滴件数も延べで9000件を超えましたが、今までに重篤な副作用は一件も起きていません。これは確立された安全な方法で点滴を行っている結果といえます。
動脈硬化について
動脈硬化とはどのような病気ですか?
人間の血管は総延長距離9万キロともいわれ、我々の体の隅々まで血液を運搬できるように配置されています。血管は動脈、静脈、毛細血管に大別されますが、このうちの動脈は壁が厚いこともあり老化の影響を受けやすいと言われています。具体的には、動脈壁が厚くなり破れやすくなったり、古い水道管の内側に錆びがたまるように血管内壁に付着物がつきやすくなります。前者でおこる病気が脳内出血(脳卒中)であり、後者の代表選手が心筋梗塞や脳梗塞になります。キレーション治療にはこうした動脈の変化を治療・予防する働きがあることが知られています。
キレーション治療はなぜ動脈硬化の治療になるのですか?
動脈硬化の原因の一つに、血液中の活性酸素の存在が挙げられます。キレーション治療を行うことで活性酸素の量が劇的に減少することが確認されています。すなわち活性酸素の量を抑えることで動脈硬化の治療と予防になるというわけです。今ひとつの動脈硬化の原因としてカルシウム代謝が挙げられます。年齢と共に本来は骨などにあるべきカルシウムが遊離して、血管壁や関節面など体内の様々な場所に沈着するようになります。これが動脈硬化の一つの原因と考えられており、こうしたカルシウムの代謝の問題を解決することが動脈硬化の治療に繋がります。キレーション治療では血液中の余剰なカルシウムを体外へ捨てる働きがあり、それに伴い血管壁などに沈着したカルシウム量を減少させる効果が指摘されています。その結果として、血管壁の弾力性が改善し(柔らかくなり)動脈硬化の治療効果があるというわけです。血管の堅さが柔らかくなる現象については、過去2年にわたり日本抗加齢医学会にてデータを公表しております。
キレーション治療の効果は太い血管だけに出るのですか?
前回までお話ししてきたように、キレーション治療を受けることによって大動脈や上腕動脈など太い動脈の弾力性が増すことが当院のデータから証明されています。一方手足の末端の血管のように細い動脈や動脈の先の毛細血管にもキレーション治療で大きな変化があると言われています。キレーション治療では点滴により薬液が全身の隅々まで到達します。これにより細い血管だけでなく細胞膜にまでその効果が及ぶことで、毛細血管の通りが滑らかになり、細い血管が形成している微小循環の状態をより良好なものとしてくれます。このためキレーション治療を受けることで、手足の冷えが改善したり、肩こりが楽になったりするわけです。キレーション治療の効果は太い血管だけでなく、全身を巡っているすべての血管にまで及んでいるのです。
キレーション治療には血液をサラサラにする効果がありますか?
血液がドロドロ、ネバネバなどという表現は健康番組などでよく耳にする言葉です。ドロドロ血液を医学的に正確に定義することは極めて難しいのですが、病気の原因という点から考えると、ドロドロ血液の特徴は、赤血球や血小板がお互いにくっつきやすい状態にあるといえます。このため末梢の血
高血圧について
キレーション治療には高血圧の治療効果がありますか?
キレーション治療には、高血圧の治療効果があります。その理由としていくつかのメカニズムが指摘されていますが、大きな理由として二つがあげられます。一つは、キレーション治療によって動脈壁に沈着したカルシウム化合物が除去され動脈壁の閉塞や弾力性が回復することで血圧が正常に回復すること。今ひとつは、キレーション治療の結果カルシウム代謝が変化することで余分な細胞内カルシウムが減少し動脈壁の筋肉の収縮力が減少し血圧が正常化するというものです。前者の代表例として、動脈硬化による動脈閉塞があげれらます。動脈の部分的な閉塞が始まると、体は血圧を上げることで血流を維持しようとします。手術などで閉塞部分を除去すると血圧が下がることがあるのは、これを裏付ける典型的な例といえます。後者の代表例は現在の治療薬の一つであるカルシウム拮抗剤の特徴をあげることができます。この薬剤は細胞内へのカルシウム流入をコントロールすることで血圧の管理を行います。キレーション治療にも同等の作用があるわけです。このため高血圧の治療薬を服用されている方では、キレーション治療を始めてから血圧が必要以上に下がってしまう場合があります。こうした方は朝晩の血圧記録を行いながら血圧が下がりすぎないように薬の服用量をコントロールする必要があります。血圧の薬は一生飲み続けなくてはいけないと言う考え方は、キレーション治療を受けている方にとっては過去のものといえるかもしれません。
頸動脈の閉塞性変化の治療効果について
キレーション治療には頸動脈の閉塞性変化に対する治療効果がありますか?
あります。米国の医師ルドルフらの報告によると平均で約48%の閉塞率がみられた頸動脈がキレーション治療によって28%まで改善したとされています(詳細は下図を参照)。動脈壁には動脈硬化の現象としてプラークと呼ばれる付着物が増えることで動脈が次第に閉塞されて行きます。このプラークには血栓が剥離して脳梗塞を起こしやすい不安定プラークと呼ばれるものがあり、極めて危険性が高いことが知られています。キレーション治療にはこうしたプラークを縮小化する効果があることが以前から知られており、結果的に脳梗塞の予防につながるわけです。頸動脈の変化は超音波エコー検査にて比較的簡単に確認することができます。
キレーション治療によって外科手術を回避することはできますか?
米国の報告では、下図に示すように、冠状動脈移植術(65例中58例)、四肢動脈閉塞による四肢切断術(27例中24例)において手術を回避することができたという報告があります。それぞれ89%ほどの確率で手術を回避できるということになります。当院の経験でも2週間後に冠状動脈移植術を受ける予定であった50代の男性が手術をせずに職場復帰を果たしています。またつい最近の出来事ですが、60代の女性が糖尿病を原因とする下肢の動脈閉塞により足が変色し、通常であれば切断手術の適応でしたが、提携先の相模原中央病院に入院しキレーション治療を受けた結果、切断せずに症状の回復を見ています。もちろんすべてのケースで手術を回避することは不可能ですが、かなりの確率にて手術をさけることは可能といえます。
心臓機能の改善について
キレーション治療によって心臓機能は改善しますか?
心不全とは心臓のポンプ機能が低下するために十分な血液を拍出することが出来ない状態です。症状としては、手足のむくみや日常生活での息切れや動悸、重症化すると就寝後の呼吸不全などがあります。原因には高血圧、動脈硬化など様々なものがあるといわれ、治療にはジギタリス製剤など心臓の働きを強める薬剤を用います。心臓の機能評価の一つとして、左心室のポンプ機能をみる駆出率の測定があります。放射性同位元素を用いる検査で信頼性が高いことが知られています。左心室駆出率が30%以下に低下すると心臓移植などが必要な重症の心不全といえます。下図はキレーション治療による駆出率の変化を示したものです。キレーション治療により心機能が改善していることがわかります。これは心臓に対する直接的な効果のほか、全身の血液の流れが改善することで心臓にかかる負担が減少した結果ともいえます。
下肢の血流改善効果について
キレーション治療には、下肢の血流改善効果がありますか?
EDTAキレーション治療の大きな特徴は血管の流れをよくすることにあります。米国で得られた臨床データでは下肢の血流不全がみられた患者にキレーション治療を行ったところ血流が回復していることが報告されています。ABIとは足首と上腕の血圧の比を意味しますが、通常ではこの比率は1.0~1.3であり、下肢の血圧のほうが腕の血圧よりも高いことが知られています。ところが動脈硬化が進み、下肢へ行く太い血管の閉塞が生じるとこのABIの値が0.9以下に減少してきます。こうした病態を閉塞性動脈硬化症と呼び最悪の場合には下肢の切断が必要になる場合もあります。しかしキレーション治療を行うと下図に示すようにABIの値が約20%以上改善する傾向があり、下肢の血流を維持できることが知られています。